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- アジャイル型システム開発におけるBTABoKの活用について
1.アジャイル開発の利点と問題点 アジャイル開発は、ソフトウェア開発の分野で広く採用されている手法であり、その迅速な対応力と柔軟性が評価されています。アジャイル開発の主な利点としては、短期間でのリリースが可能であること、継続的なフィードバックを受けて改善を繰り返すことができること、そしてビジネスの変化に迅速に対応できることが挙げられます。これにより、顧客満足度の向上や市場への迅速な対応が可能となります。 しかし、アジャイル開発にはいくつかの問題点も存在します。例えば、要求の変動やコミュニケーションの複雑さ、品質管理の難しさなどが挙げられます。これらの問題点は、プロジェクトの進行を妨げる要因となり得ます。本コラムでは、このような問題点に対応する課題を支援するために、ビジネステクノロジーアーキテクチャ知識体系であるBTABoK(Business Technology Architecture Body of Knowledge)をどのように活用できるかについて考察します。 2.アジャイル型システム開発での具体的な問題点 アジャイル型システム開発は、その柔軟性と迅速な対応力が評価される一方で、いくつかの問題点や困難な事項も伴います。以下に、アジャイル開発における具体的な問題点を挙げます。 (1) 要求の変動 アジャイル開発では、プロジェクトの進行中に顧客やステークホルダーからの要求が頻繁に変わることが一般的です。これは、ビジネス環境の変化や新たな市場機会に迅速に対応するために必要なことですが、開発チームにとっては大きなチャレンジとなります。具体的には、以下のような問題があります。 スケジュールの変更 : 要求の変動により、プロジェクトのスケジュールが頻繁に変更されることがあります。これにより、開発チームは計画の再調整を余儀なくされ、進行中の作業に影響を及ぼすことがあります。 リソースの再配分 : 新たな要求に対応するために、リソース(人材、時間、予算)の再配分が必要となることがあります。これにより、他のタスクやプロジェクトに影響が出る可能性があります。 優先順位の変更 : 要求の変動により、タスクの優先順位が頻繁に変更されることがあります。これにより、開発チームは常に優先順位の見直しを行い、最も重要なタスクに集中する必要があります。 (2) コミュニケーションの複雑さ アジャイル開発では、チーム内外のコミュニケーションが増えるため、情報の共有と理解が難しくなることがあります。特に、リモートワークや多国籍チームの場合、コミュニケーションの問題はさらに顕著になります。たとえば、以下のような具体的な問題が発生することがあります。 情報の一貫性 : チームメンバー間で共有される情報が一貫していない場合、誤解やミスコミュニケーションが発生する可能性があります。これにより、プロジェクトの進行に遅れが生じることがあります。 タイムゾーンの違い : 多国籍チームの場合、タイムゾーンの違いにより、リアルタイムでのコミュニケーションが難しくなることがあります。これにより、意思決定や問題解決に時間がかかることがあります。 文化の違い : 異なる文化背景を持つチームメンバー間でのコミュニケーションは、誤解や摩擦を引き起こす可能性があります。これにより、チームの協力体制が弱まることがあります。 (3) 品質管理 アジャイル開発では、短期間でのリリースが求められるため、品質管理が難しくなることがあります。品質管理面では、以下のような具体的な問題が発生する可能性があります。 テストの時間不足 : 短期間でのリリースサイクルにより、十分なテスト時間が確保できないことがあります。これにより、バグや不具合が発見されずにリリースされるリスクが高まります。 テストの自動化 : 品質を維持するためには、テストの自動化が重要ですが、初期の設定やメンテナンスに時間とリソースが必要です。これにより、他の開発作業に影響が出る可能性があります。 継続的な改善 : 品質を維持するためには、継続的な改善が必要ですが、短期間でのリリースサイクルにより、改善のための時間が不足することがあります。 (4) スコープの管理 アジャイル開発では、プロジェクトのスコープが曖昧になりがちで、計画通りに進めることが難しい場合があります。具体的には、以下のような問題が発生することがあります。 スコープの変更 : 要求の変動により、プロジェクトのスコープが頻繁に変更されることがあります。これにより、計画通りに進めることが難しくなり、プロジェクトの進行に遅れが生じることがあります。 スコープの拡大 : 新たな要求や機能追加により、プロジェクトのスコープが拡大することがあります。これにより、リソースの不足やスケジュールの遅延が発生する可能性があります。 スコープの明確化 : プロジェクトのスコープを明確に定義し、チーム全体で共有することが重要ですが、要求の変動によりスコープの明確化が難しくなることがあります。 このように、アジャイル型システム開発には多くの問題が存在しますが、これらの問題に対する課題を支援するための方法として、BTABoKを活用することで、より効果的な開発プロセスを実現することができないかを考えてみます。 3.アジャイル型システム開発の課題への対応におけるBTABoKの活用 BTABoKは、ビジネステクノロジーアーキテクチャの知識体系ですが、アジャイル型システム開発の課題に対応するためにも有効なツールです。ここでは、アジャイル開発における課題に対して活用できるBTABoKで提示されているモデルや手法について紹介します。 (1) 要求の変動への対応 BTABoKでは、ビジネスの変化に対応するためのフレームワークを紹介しており、要求の変動に柔軟に対応することができます。具体的には、以下のようなモデルや手法が活用できます。 ビジネスモデルキャンバス ビジネスモデルキャンバスは、アーキテクチャとイノベーションに使用されるビジネスモデルを提供します。一般的には、顧客と価値提案から始めたいキャンバスを使用し、その後、他の領域に移ります。ビジネスモデルキャンバスは、ビジネスモデル全体を 1 つのビジュアルシートに凝縮する強力な戦略ツールです。それは単なるアーキテクチャではなく、イノベーションを刺激し、ビジネスのあらゆる側面が整合するようにすることです。ビジネスモデルキャンバスは、顧客とそのニーズを優先します。価値提案(提供する中核的なメリット)から始めることで、運用、リソース、財務を調整して、優れた価値を提供することができます。ビジネスモデルキャンバスを用いて、ビジネスの全体像を視覚的に把握し、要求の変動に対する影響を評価します。これにより、ビジネスの変化に迅速に対応するための戦略を立てることができます。 ⇒ 参考サイト: https://iasa-global.github.io/btabok/business_model_canvas.html バリューストリームキャンバス バリューストリームキャンバスは、顧客から制御、サプライヤー、運用を通じて推進される組織内のどこで価値が生み出されるかを理解するために使用されます。バリューストリームキャンバスを用いて、ビジネスプロセスの流れを可視化し、どの部分が要求の変動に影響を受けるかを特定します。これにより、変動に対する迅速な対応が可能となります。 ⇒ 参考サイト: https://iasa-global.github.io/btabok/value_stream_canvas.html アジャイルインパクトキャンバス アジャイルインパクトキャンバスは、アジャイル手法が企業、チーム、またはドメインに与える全体的な影響を説明するために使用されます。キャンバスは、ビジネスモデル、組織構造、文化などへの影響について考えるためのツールです。これは、組織でアジャイルを機能させるための最善の方法をブレインストーミングしている多面的なチームによるファシリテーションツールとして使用すると、最も効果的です。 ⇒ 参考サイト: https://iasa-global.github.io/btabok/agile_enterprise_impact_canvas.html (2) コミュニケーションの改善 BTABoKでは、ビジネスとITの間のコミュニケーションを促進し、ステークホルダーの共通の理解を深めるためのツールを提供します。具体的には、以下のようなモデルや手法が挙げられます。 ビジネスケイパビリティキャンバス ケイパビリティモデルは、組織が顧客に価値を提供するために必要な基本的なスキルとリソースを構造化して分類したものです。バリューストリーム (価値創造のエンドツーエンドのプロセス) に統合されると、機能モデルは青写真のように機能します。これは、潜在的なボトルネック、冗長性、および的を絞った投資によって価値の流れを大幅に改善できる領域を特定するのに役立ちます。これにより、効率が向上し、リソース割り当ての理解が深まり、イノベーションが結果を出す可能性が最も高い場所を特定する能力が得られます。ビジネスケイパビリティキャンバスを用いて、ビジネスの主要な機能や能力を明確にし、ITとの連携を強化します。その結果、ビジネスとITの間で共通の言語を持つことができ、コミュニケーションが円滑になります。 ⇒ 参考サイト: https://iasa-global.github.io/btabok/business_capability_canvas.html アーキテクト組織キャンバス アーキテクト組織キャンバスは、組織のアーキテクチャ能力を理解し、向上させるために特別に調整された一種のビジネス能力カードです。アーキテクトが組織全体にどれだけ関与しているか、ビジネスからソリューション(戦略から実行まで)の有効性、重要な意思決定の割合、および全体的な利害関係者の関与に関連する指標を定義するチームの範囲に重点が置かれています。 ⇒ 参考サイト: https://iasa-global.github.io/btabok/architect_organization_canvas.html ステークホルダーマネジメントプラン ステークホルダーマネジメントプランは、あらゆるイニシアティブに影響を与えるグループと個人のリストを提供し、ステークホルダーテンプレート、カード、キャンバスの中核を形成します。このリストの目標は、利害関係者のグループに管理計画を提供することです。このリストは、追加のリンクされた利害関係者カードとキャンバスのセットを使用して作成されます。ステークホルダーマネジメントを通じて、関係者とのコミュニケーションを計画的に行い、情報の共有と理解を促進します。これにより、プロジェクトの進行がスムーズになります。 ⇒ 参考サイト: https://iasa-global.github.io/btabok/stakholder_management_plan.html (3) 品質管理の向上 BTABoKでは、品質管理のプロセスを標準化し、継続的な改善を促進する、以下のようなモデルや手法を活用することができます。 品質アシュアランスアプローチ 品質保証は、開発プロセス全体を通じて行われるものです。品質保証を早期に開始し、アーキテクチャを継続的にチェックすることは、非効率的な設計を検出することにつながります。開発プロセスの早い段階でエラーや問題を発見することで、修正にかかる費用が安くなります。品質アシュアランスフレームワークを導入し、品質管理のプロセスを標準化します。これにより、品質の一貫性が保たれ、バグや不具合の発生を防ぐことができます。 ⇒ 参考サイト: https://iasa-global.github.io/btabok/quality_assurance.html DevOps アーキテクチャ DevOpsとは、ソフトウェア開発(Dev)と情報運用(Ops)を組み合わせて、組織のこれら2つの伝統的に別々の領域間のギャップを埋める一連のプラクティスを指します。これは、アジャイルの原則を従来の品質保証 (QA) 手法と統合することで、コラボレーションを改善し、プロセスを自動化し、効率を向上させることを目的としています。DevOps の主なコンポーネントであるContinuous Integration(CI:継続的インテグレーション)により、テストとビルドのプロセスを自動化できるため、一貫した品質を確保し、バグを早期に検出できます。また、Continuous Delivery(CD:継続的デリバリー)により、迅速な修正と迅速な反復が可能になり、チームは変更を迅速に展開してテストできます。CI/CDパイプラインを構築し、コードの変更を自動的にテスト・デプロイすることで、品質を維持します。DevOps プラクティスを採用することで、組織は、反復的なタスクの自動化、ワークフローの合理化、部門横断的なチーム間のコラボレーションの促進により、市場投入までの時間を短縮し、欠陥を減らし、顧客満足度を高めることができます。 ⇒ 参考サイト: https://iasa-global.github.io/btabok/dev_ops.html テスト自動化 製品の品質を評価し、欠陥や問題を特定することで改善する活動であるテストは、実行領域テストから選択された有限のケースセット(通常は無限)に対するプログラムの動作の動的検証で構成され、予想される動作に関連し、見つかった欠陥の観点から機能システムと非機能システムを測定します。組織内でテスト自動化ツールを適切に使用することにより、反復的なテスト作業を効率化できます。これにより、テストの時間を短縮し、品質を高い水準で維持することができます。 ⇒ 参考サイト: https://iasa-global.github.io/btabok/tmtt.html (4) スコープの管理 BTABoKでは、プロジェクトのスコープを明確に定義し、計画通りに進めるためのガイドラインとして、以下のような手法が提示されています。 スコープとコンテキスト スコープとは、アーキテクチャに関する一連の決定によって影響を受けるビジネステクノロジ戦略の量を指します。スコープとコンテキストは、アーキテクチャエンゲージメントをその影響のレベルとそれが発生する環境に基づいて理解するための2つの側面です。スコープとコンテキストの明確さは、アーキテクトやチームを大幅に節約でき、ドキュメントやテクノロジー手法と同じくらい重要です。スコープマネジメントプランを策定し、プロジェクトのスコープを明確に定義します。これにより、スコープの変更が発生した場合でも、計画通りに進めることができます。 ⇒ 参考サイト: https://iasa-global.github.io/btabok/scope_context.html ASRカード ASR(Architecturally significant requirements)カードは、アーキテクチャ上重要な要件を定義するためのツールです。アーキテクチャ的に重要な要件 (ASR) は、アーキテクチャのライフサイクル全体を通じて主要な考慮事項である必要があります。戦略計画の初期段階では、ASR を特定して、アーキテクチャの選択と長期的なビジネス目標の整合性を確保することが有益です。これにより、テクノロジーの選択からリソースの割り当てまで、プロジェクト全体の方向性が導かれます。ASRは、適切に構造化されたアーキテクチャの基盤となり、システムのコンポーネントがどのように相互作用するか、およびスケーラビリティやパフォーマンスなどの側面をどのように処理するかに関する決定を促進します。設計段階では、技術チームが設計のビジョンに沿った選択肢を確保するための絶え間ないチェックとして機能します。要件の変更や新しいテクノロジーを検討する場合でも、ASRは不可欠です。これらの変更が既存のアーキテクチャ上の決定に与える潜在的な影響を迅速に評価し、システムの整合性を損なわない適応を導くのに役立ちます。 ⇒ 参考サイト: https://iasa-global.github.io/btabok/asr_card.html アーキテクト エンゲージメント キャンバス アーキテクト エンゲージメント キャンバスは、アーキテクチャプラクティスによって、そのエンゲージメントモデルを理解し、計画するために使用されます。これは、より優れたアーキテクチャの成果をサポートまたは提供するための成果物、タスク、およびツールを定義するために使用されます。アーキテクト エンゲージメント キャンバスを利用して、プロジェクトガバナンスを強化することにより、スコープの変更に対する承認プロセスを明確にでき、スコープの管理が徹底され、プロジェクトの進行がスムーズになります。 ⇒ 参考サイト: https://iasa-global.github.io/btabok/architecture_process_engagement.html このように、BTABoKのモデルや手法を活用することで、アジャイル型システム開発の課題に対処し、より効果的な開発プロセスを実現することができると考えられます。 実際にアジャイル型システム開発の問題点を解決するためには、BTABoKのモデルや手法の理解を深める必要がありますので、BTABoK解説セミナーへの参加などもご検討ください。BTABoK解説セミナーについては、以下のIasa日本支部のイベントのサイトをご参照ください。 https://www.iasa-japan.org/event ご一読いただきありがとうございました。 Iasa日本支部では情報交換や勉強会の場を設けており、アーキテクチャの実践的な活動についても研鑽を深めていますので、今後のIasa日本支部の活動へのご参加、ご協力をよろしくお願いいたします。
- BTABoK Value Streams ~ ビジネス目標を達成するための価値の流れ~
はじめに 今回のコラムでは、BTABoKにおけるバリューモデルの一つである " Value Streams " について取り上げます。Value Streamsは、組織が提供する価値の流れを明確にする概念です。本コラムでは、Value Streamsの基本概念から、ITアーキテクトがどのようにValue Streamsを活用すべきか解説します。 Value Streamsとは BTABoKにおけるValue Streamsとは「組織がビジネス能力をどのように構成して、内部又は外部の利害関係者(通常は顧客)に価値を提供するかを示すもの」を意味します。 ITアーキテクトの役割は、単なる技術の実装にとどまらず、ビジネス目標を達成するための戦略的な意思決定を支援することにあります。そのため、ITアーキテクトは、データやシステム、インフラの構造を設計するだけでなく、価値の流れを最適化して組織全体のパフォーマンス向上に貢献する必要があります。ここで重要になるのが「Value Streams」の概念です。 Value Streamsは、組織のビジネス能力を通じて、どのように価値を創出し、その価値を提供するためにどのようなサービスが関わっているのかを明確にする手法です。ビジネス戦略と技術戦略を統合し、最適な価値の流れと価値の構成を理解するために、ITアーキテクトはValue Streamsを活用することが求められます。 Value Streamsがもたらす効果 組織が市場で競争力を維持し、持続的な成長を実現するためには、価値の流れを適切に理解し、最適化することが不可欠です。新しい製品やサービスの市場投入、合併・買収、調達先の変更、デジタル化、新規市場への参入、業務の最適化など、ビジネス環境の変化に適応するには、価値がどのように顧客・その他のステークホルダーへ流れているのかを把握する必要があります。 Value Streamsは、価値の流れを明確にし、最適化するための手法であるため 、組織はビジネスの変化に迅速に対応し、構造的な無駄や非効率を削減しながら、新たな市場機会を創出できます。 より具体的に述べると、Value Streamsを活用することで以下の効果があります。 顧客セグメントの差別化 能力の依存性と関連性の理解 規制や法改正の影響の理解 構造的無駄と非効率の特定 製品・サービスの国際化とカスタマイズ 既存の能力を活用した新しい価値の流れの創造 サービス指向と疎結合システムの設計 Value Streamsを活用するステップ Value Streamsを活用するためには、以下のステップを踏むことが重要です。 価値の流れの特定 まずは、価値の流れを特定する必要があります。 価値の流れを特定するための起点としては、顧客視点以外にも、お金の流れ、業務の流れ、ルールやポリシーの影響といったステークホルダー視点を起点とする方法があります。 【顧客視点】 製品・サービス(Products/Services) ⇒最も直接的な方法。顧客が認識する具体的な価値(=製品やサービス)を起点に、価値がどのように流れるかを特定 ビジネスモデル(Business Model) ⇒製品・サービス単体ではなく、企業全体の価値提案を整理し、価値の流れを特定 付帯サービス(Ancillary Business Services) ⇒製品やサービスそのものではなく、関連する前後の活動(返品、故障対応、苦情、請求、情報提供など)を起点として価値の流れを特定 【ステークホルダー視点】 財務(Financial) ⇒売上、コスト、投資、利益などの財務データを基にバリューストリームを特定 運用(Operational) ⇒組織の活動(業務の流れ)の中でどのプロセスが価値を生み出しているのかを特定 ガバナンス(Governance) ⇒法規制、社内ルール、経営方針などがどのように価値提供に影響を与えるのかを特定 ビジネス能力のマッピング 価値の流れに沿って必要なビジネス能力をマッピングします。 価値の流れの視覚的マッピング 各ビジネス能力の接続関係の明示 サービスの相互作用の特定 価値の流れのパフォーマンス分析 価値の流れの効果を評価し、課題を特定します。 各能力のパフォーマンス評価(効率・有効性) 主要なペインポイントの特定 情報ギャップの特定と解消 価値の流れの貢献度分析 価値の流れが戦略や財務に与える影響を評価します。 戦略的影響と財務的影響の評価 価値提案のインパクトの分類(アドバンテージ、戦略的サポート、ビジネス上の必要性) 価値の流れの最適化 価値の流れを改善し、より高い価値を生み出すための調整を行います。 サービスの境界の明確化と最適な配置の検討 財務的影響の評価とコスト削減・収益最大化の施策検討 規制の影響分析とリスク対応策の策定 Value Streamsは、ITアーキテクトがビジネス目標を達成するために不可欠な概念です。Value Streamsを活用することで、価値の流れを最適化し、ビジネス戦略と技術戦略の整合性を確保することが可能となります。組織の競争力を高めるために、ITアーキテクトは価値の流れを理解し、価値の流れを最適化することが求められています。 ご一読いただきありがとうございました。 Iasa日本支部では情報交換や勉強会の場を設けており、システムの視覚化についても研鑽を深めていますので、今後のIasa日本支部の活動へのご参加、ご協力をよろしくお願いいたします。
- 体験価値(UX)を高める品質とは - Usability, Localization, Accessibility, Personalization/Customizability
デジタル製品やサービスが日々進化する中で、ユーザーにとって体験価値を高める品質の高さがとは何かを考えることがますます重要になっています。品質というと故障が少ない、性能が良い等の機能的な観点で語られることが多いですが、それだけではユーザーの体験価値を高める 品質的要素 として不足しており、 体験価値(UX)を高める品質的要素として「使いやすさ(Usability)」「ローカライズ(Localization)」「アクセシビリティ(Accessibility)」「パーソナライズ/カスタマイズ(Personalization/Customizability)」の4つを機能的品質に加えて考慮する必要があります。これらの概念を適切に設計に取り入れることで、より多くのユーザーに価値ある体験を提供し、競争力を高めることができます。BTABoKではこれらの要素をCompetency ModelのQuality Attributesで取り上げており、Quality(品質)というものを機能的な観点だけではなく、様々な要素により高められるものと捉えています。本コラムでは、BTABoKのCompetency ModelのQuality Attributesの中にあるUsability, Localization, Accessibility, Personalization/Customizabilityそれぞれの要素が持つ役割や実践方法について解説します。 使いやすさ(Usability): ユーザー中心のデザインとは? ユーザビリティとは、「製品やシステムがどれだけ簡単に、効率的に、満足のいく形で利用できるか」を指す概念です。ISO 9241-11では、ユーザビリティを「特定のユーザーが特定の目標を達成する際の有効性、効率性、満足度」と定義しています。 ユーザビリティの重要性を考えてみるとデジタル製品が溢れる現代において、直感的に操作できないサービスはすぐにユーザーから敬遠されてしまいます。たとえば、ナビゲーションが分かりにくいアプリや、情報が整理されていないウェブサイトは、競合他社の製品に比べて不利になります。 ユーザー中心設計(UCD)のアプローチ ユーザビリティを向上させるためには、「ユーザー中心設計(User-Centered Design: UCD)」が不可欠です。UCDでは、以下のような手法を用いて設計を行います。 ユーザー調査(インタビュー、アンケート、行動分析) プロトタイピング(ワイヤーフレーム、モックアップの作成) ユーザーテスト(A/Bテスト、ヒューリスティック評価) 使いやすさを向上させた成功事例として、AppleのiPhoneは、直感的なインターフェースとシンプルな操作性で世界中のユーザーに受け入れられています。また、Googleの検索エンジンも、ユーザーが最小限の手間で情報を得られるように設計されています。 ローカライズ(Localization): グローバル展開の鍵 ローカライズとは、特定の地域や文化に適した形で製品やサービスを最適化するプロセスを指します。単なる言語翻訳だけでなく、文化的・法的な適応も含まれます。 世界市場で成功するためには、ローカライズが不可欠です。たとえば、以下のような点に注意する必要があります。 言語の違い(直訳では伝わらないニュアンスを考慮する) 通貨・単位の変更(米ドルから円、華氏から摂氏への変換) 文化的な配慮(色やシンボルの意味、宗教的な要素) 法規制の順守(GDPRなどのデータ保護法に対応) 以上のことから単純に言語を現地の言葉に翻訳する対応だけではないことがわかりますが、これらの要素を後付けで実装するにはソフトウェア構造を大きく修正する必要が出てくる可能性があり、ソフトウェア・ウェブサービス等では上流段階でローカライズ戦略の是非を考慮しておく必要があります。例えばローカライズ戦略として以下のような項目が考えられます。 インターナショナルデザイン:最初から多言語対応を考慮する 柔軟なインターフェース:言語によって文字の長さが変わるため、適応可能なデザインを採用 ローカライズテスト:ターゲット市場でのユーザーテストを実施 ローカライズ戦略の成功事例としてはNetflixは、各国のユーザー向けにローカライズしたコンテンツを提供し、世界中で成功を収めています。また、Airbnbも、現地の文化に配慮したユーザーインターフェースを提供することで、グローバルな展開を成功させています。 アクセシビリティ(Accessibility): すべての人に優しい設計 アクセシビリティとは、障がいを持つ人々を含むすべてのユーザーが、製品やサービスを利用できるようにすることを指します。特に、視覚・聴覚・身体的な制約を持つ人々への配慮が重要です。これらはウェブコンテンツのアクセシビリティに関する国際基準であるWCAG(Web Content Accessibility Guidelines)や米国におけるアクセシビリティの法律であるADA(Americans with Disabilities Act)等で定義されています。 PCのOS等でも標準機能として実装されていますが、以下のようなものがアクセシビリティの代表的な実装といえます。 スクリーンリーダー対応(音声読み上げ機能の実装) 高コントラストモード(色覚障害のある人向けに適応) キーボード操作の最適化(マウスを使えないユーザーへの配慮) パーソナライズ/カスタマイズ: ユーザー体験の最適化 パーソナライズとカスタマイズは一見すると似たような意味合いに取られる場面がありますが、以下のような違いがあります。 パーソナライズ:システムが自動的にユーザーの行動を学習し、最適な体験を提供する(例:Amazonのレコメンド機能) カスタマイズ:ユーザー自身が設定を変更して最適な環境を作る(例:ダークモード、フォントサイズ調整) 上記の定義で考えるとシステムが自動的に行うものなのか、ユーザー自身が行うものなのかという部分に違いがあります。特にパーソナライズに関してはシステムが自動的に行うものであるため、AIというコンテキストで語られることが多く、実際にAmazon、Netflix、Spotify、その他様々なサービスでAIを活用してユーザーの嗜好に基づいたコンテンツを提供する企業が増えています。 「使いやすさ」「ローカライズ」「アクセシビリティ」「パーソナライズ/カスタマイズ」は、現代のデジタル製品の成功を左右する重要な要素です。これらを適切に取り入れることで利用時品質というユーザー(利用者)が直接感じる品質を高めることができ、より多くのユーザーに価値を提供し、企業の成長を加速させることができます。今後も、ユーザー体験を向上させるための技術や手法は進化し続けるでしょう。デジタル製品を開発する際には、これらの要素を意識し、より優れたサービスを提供していくことが求められていくでしょう。 Iasa日本支部では情報交換や勉強会の場を設けており、システムの視覚化についても研鑽を深めていますので、今後のIasa日本支部の活動へのご参加、ご協力をよろしくお願いいたします!
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