前回に引き続きBITASのハイライトを取り上げたいと思います。今回は、「デジタル・エンタープライズ・アジリティ」について述べていきます。
BITAS に参加するにあたっての予習ということで、ハイライトの2番目に掲げている「デジタル・エンタープライズ・アジリティを促進するクリティカルスキル」の前提知識として位置付けてください。
【参考】 BITASプログラムハイライト
イノベーションを促進し、継続的な変革を推進するための方法
デジタル・エンタープライズ・アジリティを促進するクリティカルスキルの重要性
現実世界のデジタル化のケーススタディ紹介とウォークスルー
デジタルビジネスを推進するための、デジタル・カスタマージャーニーマッピング
IT をビジネスにとって戦略的に重要なものにするビジネス・アーキテクチャ
ヒューマン・ダイナミクスの複雑さを管理し、理解する上でのアート (技能) と科学
成功するプロジェクト実施のためのビジネス要件アーキテクチャ
デジタルの混乱から競争上の優位性をもたらす、ビジネスチャンスへの変換
日本企業への現地訪問を通しての DX の取り組みと企業文化の理解
他国の参加者とのつながり、ネットワーキングおよび現実世界のシナリオの共有
ビジネスニーズにより迅速に対応するため、システムを構築する現場では、アジャイル開発が普及しつつあります。しかし、企業や事業部レベルでアジャイル開発を行うためには、中長期的な情報戦略や大規模なプロジェクトの管理、PMやアーキテクトの役割など従来手法を中心に体系化されていたものを革新する新たな取り組みが必要となります。
取り組みのひとつとして、「アジャイルプロセスフレームワーク」と呼ばれるものが「エンタープライズアジャイル」という言葉とともに出てきており、その代表的なフレームワークが SAFeとDADのふたつです。
それぞれ、アーキテクトの役槍をどのように捉えているのでしょう。まずは、SAFe についてのアーキテクトの役割について紹介したいと思います。
企業戦略とシステム開発を一体化する枠組みである SAFe (Scaled Agile Framework) は、Dean Leffingwell 氏が中心になって開発したアジャイルプラクティスとリーンプラクティスを企業全体に広げるのを支援する業界標準のフレームワークです。
SAFe の導入によって、企業や事業部は、組織横断的な一貫した戦略を持つことができ、開発メンバーの仕事に関する満足度を高めることができ、より良い品質のシステムを提供することが可能となります。
SAFe では、システム開発における関係者を以下のように定義し、システム・アーキテクトには、ビジネス戦略に基づいた、技術的なビジョンと実装シナリオのディファインを期待しています。
平たく言えば、ステークホルダーが主張するビジネス要求やシステム要求を、業務要件とシステム要件として具体化し、アーキテクチャーをデザインすることであるかと思います。
この定義で登場するアジャイル・リリース列車 (ART) は、SAFe 独特のものです。SAFe ではプログラムレベルでのプロダクトオーナーに相当するプロダクト管理者という役割やプログラムレベルでのスクラムマスターに相当するリリース列車エンジニアという役割を設けています。
メタファーとしての列車は、ダイヤに従って駅を出発し、目的の駅に到着する。この列車が仮想の組織を構成し、必要な資源(プロトタイプ、ソフトウエア、ハードウエア、ドキュメントなど)は貨物として列車に載せられる。最終的には、リリースという形で列車は目的の駅に到着するということになります。
次に、DAD (ディシプリンド・アジャイル・デリバリー) における役割を見ていきましょう。
DADを考案したのは、IBMの Scott Ambler 氏と Mark Lines 氏です。DADにより、2006年に1 年ごとだった製品リリースは、2012年には3ヶ月ごとになり、すべての製品が当初計画の納期を守るといった効果を得ています。
DADフレームワークは、以下のような役割セットを提案しています。
上記にある“主な役割”と”補助的役割”との違いですが、主な役割とは、すべてのDADプロジェクトで、状況にかかわらず現れる役割のことで、補助的役割は、状況に合わせての対応や一時的な局面での対応で、必要とされる役割です。DADの特徴のひとつとして、アーキテクチャの課題を扱っており、それに応じたアーキテクチャオーナーという役割を提示している。(スクラムは、アーキテクチャを扱わないので、そのような役割がない)
DADにおけるアーキテクトの立ち位置は、以下のディシプリンドアジャイルのプロフェッショナルの役割から読み取れます。
エンタープライズアーキテクトやポートフォリオ管理者といった、全社レベルのプロフェッショナルと密に協力して働く
全社標準のガイドラインを採用し準ずる。
組織内のアセットを活用する。アセットには既存のシステムやデータソースが含まれる。
組織のエコシステムを、アセットをリファクタリングすることで、拡張する
DevOps 文化を適用する
学習したことを他のチームと共有する。
適切なガバナンス戦略を採用する。オープンで正直なモニタリングが含まれる
DADでは、エンタープライズ対応に徹し、全社レベルの価値観によって正しい方向に向かうことを良しとしているようです。エンタープライズ・アーキテクトを中心としたアーキテクトチームが、DADの効果を上げる重要な役割をはたすことが求められています。
SAFe も DADにしても、アーキテクトの役割が、重要な位置を占めることが期待されています。いずれにしても、「デジタルエンタープライズアジャイル」の分野は、今後とも発展し、アーキテクトに期待されることも大きくなっていくことが考えられます。Iasa日本支部でもウォッチしていきたいと思います。是非、情報共有のご協力をお願いします。
追記)
SAFe は、今後普及が進むと考えられており、ITABoKV3.0 でも紹介しています。参考にしてください。(日本語訳は今秋刊行予定です)
https://iasaglobal.org/itabok3_0/engagement-model-overview-3-0/lean-and-agile- adoption/agile-and-architect-roles/roles-and-personas-mappings-to-safe/
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