「Iasa日本支部アニュアルカンファレンス2021」
講演の主要テーマ 事前のご紹介
2021年10月
Iasa 日本支部 梶川 哲生
シリーズで掲載している今回のコラムでは、来たる2021年11月5日に開催するIasa日本支部主催「アニュアルカンファレンス2021」の講演の主要テーマと関連する背景等について先行してご紹介します。(Iasa日本支部イベントのご案内http://iasajapan.org/anual-conf-2021.html)
社会全体が本格的なデジタル活用と革新の時代を迎えつつある今日、DXの根幹を担う「アーキテクチャ」の理解とその取組み方如何で、DXの取組みを成功裡に継続的に具現化していけるのか、または、期待に反して成果が見えない取組みで終息してしまうのか、その分岐点となる重要な鍵を各方面で活躍されている講演者をお招きし、それぞれの立場でメッセージを発信して頂きます。本コラムでは、公開済みのイベント掲載情報を補足する形で各講演者のプロフィールと講演内容について紹介させて頂きます。
講演1. なぜEAがDXを加速するのか?
〜 DXの本質とEAによる推進手法 〜
講演者: 山本 修一郎 様
最初に登壇頂く山本様は、現在名古屋国際工科専門職大学 情報工学科教授、及び、名古屋大学 名誉教授を担っておられます。ソフトウェア工学,要求工学,EA, DXなどの研究に基づく独自の知見と経験をお持ちで、政府機関の数々の施策や委員会のDX分野でのオピニオン・リーダーとしても活躍されています。(経済産業省のデジタルトランスフォーメーションに向けた研究会委員(2018年)、デジタルトランスフォーメーションの加速に向けた研究会委員(2020年)、その他多数の要職を歴任)
本講演では,山本様ならではの知見に基づいたDXの取組みに於いて共通する本質的な問いとその見解をご紹介頂きます。最初の論点として、
① DXでなぜEAが必要なのか
・日本と世界のEAの違い
・デジタルケイパビリティとは何か
・ケイパビリティベースプランニングとは何か
・ダイナミックケイパビリティとは何か
についてお話し頂きます。この中で「ケイパビリティ」という言葉は日頃馴染みが薄い読者の方も多いかも知れません。ここでは、DXの取組みを通じてその成果を継続的に創出する上で重要な「企業や組織が持つ、全体的な組織的能力、あるいは、企業や組織が得意とする組織的能力」(Wikipedia)とご理解下さい。ケイパビリティについてDXの観点から山本様の展望は大変興味深いところです。
更に経営者の方々に最も関心のあると思われるDX取組みの際の実際的な課題として、’DX人材の育成’, ’儲かるDX’ の論点に加え、現在世界的に関心が高まっているSDGsイニシアティブとの関連について、’SDGsとの両立’は出来るのか、についても氏の見解をお話し頂きます。
② DXに取組む上での課題
・石垣型経営からジョブ型経営への移行をどうするか
・DX人材の育成をどうするか
・儲かるDXをどうするか
・SDGsとDXをどう両立させるか
最後に、より詳しく探求されたい方向けに氏の著書の紹介の中でその内容と背景等も触れて頂ける予定です。
③ 著書『DXの基礎知識』(近代科学社Digital)の紹介
山本様にはDXの核心に迫る大変興味深いテーマと論点を取り上げて頂いております。是非当日の講演をご期待下さい。
講演2. 「DX時代におけるCX/UXの重要性と事例紹介」
〜 良いCX/UX、悪いCX/UXとは何か、その違いは利用者中心であるか否かに尽きる 〜
講演者: エスディーテック株式会社CEO 川端 一生 様
2番目の講演は、エスディーテック株式会社CEO川端 一生 様にご登壇頂きます。川端様が2015年に創業されたエスディーテック社のホームページにはその企業理念として
『「Design Engineering」のプロフェッショナルチームです。デザインとエンジニアリングの分業ではなく、統合された「Design Engineering」により、⻑く愛される「ヒトとモノ」そして「ヒトとコト」のインターフェースを⽬指さしています。』
と記載されています。(エスディーテック社HP https://www.sdtech.co.jp/)
川端様の講演では、以下の要旨でお話し頂きます。
『多くのITシステムの開発において、機能品質だけが追求され、利用時品質は着目されていない。この講演では、CX/UXのベースとなる利用時品質について解説し、利用者中心の開発を行うための考え方である「人間中心設計(ISO9241-210)」の紹介と解説を行い、機能品質と利用時品質を高いレベルで兼ね備えるITシステムを実現するために、上流の企画・設計フェーズにおいて、ITアーキテクトとCX/UXデザイナがチームで取り組む必要性を解説する。』
講演では要所で事例も紹介頂けます。私達Iasa関係者の気付きとしても、従来のEAの視点に加えてCX/UXもアーキテクチャの構成要素として捉え、その設計を意識的に行う事がDXにも必須である、と思っております。まさに「DesignをEngineeringする」が意味している事では無いでしょうか?
Iasa日本支部の掲載済みコラムで、EAとCX/UXの関連性について解説をした記事がありますので、こちらもご覧頂いておくと本講演の理解がより深まると思いますので是非ご利用下さい。。
講演3. 「BTABoKはアーキテクチャの実践にどの様に変化をもたらすか?」
〜 ステークホルダー主導のアーキテクチャの実践のフレームワークBTABok〜
講演者:IasaGlobal ファウンダー兼 CEO Paul Preiss様 (英語による講演)
3番目の講演は、Paul Preiss氏(ポール・プライス氏)による講演です。プライス氏は、世界最大級のエンタープライズおよびITアーキテクト協会であるIasaGlobalのファウンダー兼CEOです。(Iasa日本支部は、IasaGlobalの日本担当地区の支部になります)
Iasa Globalは、テキサス州オースティンにあった1つのユーザーグループから、2021年現在は25カ国以上に支部を持つ国際的な組織へと発展しました。プライス氏の創設時からの一貫したビジョンは、’効果的な教育、資格、倫理観を備えた世界で通用する ’アーキテクチャ専門職’ を普及させ、企業の戦略と実現を支援する事’です。自らエンタープライズ・アーキテクトとしても活躍されており、企業の技術戦略の最適化の実践を通じて貢献しています。また、数百ものイベントで精力的に講演し、コロナ禍に置いても世界中のアーキテクトを対象としたカンファレンスやトレーニングを開催しています。(IasaGlobalホームページ: https://iasaglobal.org/)
今回のプライス氏の講演の最大のトピックは、過去10年以上にわたりIasaGlobalが公開し改訂してきた’ITABoK (IT Architecture Body of Knowledge / ITアーキテクチャ知識体系)’ の名称とスコープを変更し、’BTABoK(Business and Technology Architecture Body of Knowledge / ビジネス&テクノロジー・アーキテクチャ知識体系)’ とリニューアルした事です。対象スコープをIT視点からビジネス視点も包含する内容に明示的に拡大した背景や理由、更に今後の展開についても本講演で紹介されますのでご期待下さい。
今回のプライス氏の講演の要旨としては、以下の内容をお話し頂きます。
『アーキテクトやアーキテクトチームの目標は、ビジネスや顧客に価値を提供することです。BTABoK(旧ITABoK)は、これを可能にする実際のツールとテクニックの大きな飛躍を指し示すと同時に、より成熟したアーキテクチャのプラクティスを開発しています。BTABoKは当初から、プロセスや単なる成果物ではなく、人を中心に設計されています。長い間待ち望まれていた3.0では、ビジネスとテクノロジーの両方の観点から価値を提供するために、アーキテクチャのプラクティス(チーム)を結びつけることができるようになります。これは、あらゆる規模の現代のビジネスにおいて絶対に必要なことです。』 (BTABoK v3英語ドラフト版: https://itabok.iasaglobal.org/)
また、以下の実践的な方法についての紹介があります。
企業のアーキテクチャ的に重要な要件からソフトウェアの最小単位の決定まで、設計上の意思決定を最大化する方法
最小限の努力で最大限のステークホルダー・サクセスを実現する方法
統合、リファレンスアーキテクチャー、フレームワークなど、あらゆるレベルのスコープでパターンを適用する方法
共通の価値観や信頼関係の問題に直面せず、成功するアーキテクチャ・チームを計画し、構成し、実現する方法
これらの実践については、フォーチュン100社の多くの企業で採用、適応され始めている事も付け加えておきたいと思います。
終わりに..
本項では、来たる2021年11月5日に開催するIasa日本支部主催アニュアルカンファレンス2021の3講演のテーマと関連する背景等について補足する形で紹介させて頂きました。
当日の講演は事前登録のみで無料でご参加いただけます。この貴重な講演の機会をご活用頂ければ幸いです。
Iasa日本支部イベントご案内:http://iasajapan.org/anual-conf-2021.html
注記:本コラムで紹介した講演要旨の補足内容と実際の講演内容が若干変わる場合があります。予めご了承下さい。
ー 終わり ー
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