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執筆者の写真梶川 哲生

BTABoK Community ~ コミュニティ ~

今回のコラムでは、BTABoKにおける全体像(下図参照)のうちPeople Modelにあるコミュニティについて紹介します。(文中の太字部分は、BTABoK原文に準拠した和訳になります。)

コミュニティとは?

BTABoKでは、「コミュニティ」を、組織内外のアーキテクトや拡張チームメンバーからなる協働するグループと定義しています。このグループは、最善のビジネスおよびテクノロジー戦略を実現するために協力します。コミュニティは、人々が単なる緩やかな集まりではなく、組織内外のさまざまな専門家(ベンダーやサービスプロバイダーも含む)が協力し、センターオブエクセレンスやプロフェッショナリズムを具現化するために結びつく役割を果たします。


なぜコミュニティが重要なのか?

BTABoKでは、継続的なアーキテクチャの推進と実践に於いて、組織や部門、専門領域を超えた横断的な活動とチームの連携が非常に重要であるとの考えに基づいています。その理由は、様々な専門知識やスキル、ベストプラクティスに基づく成果は、横断的なチームとしてのコミュニティの連携によって生み出されるからです。(コミュニティは、別コラムで紹介したピープルモデルの構成要素6つのうちの一つです。)


では、アーキテクトの活動に於いてコミュニティの重要性とその役割について、その基本的な理念の説明をもう少し詳しく見ていきましょう。


BTABoKの理念として以下の4つのコミュニティの基本的アプローチが紹介されています。

コミュニティは、

  1. アーキテクトの能力を最大限に引き出すための基盤の役割を担う

  2. エンゲージメントモデルに基づく価値、目的、ミッションを共有し継続する

  3. アーキテクチャの価値や品質を決定付ける

  4. 同意されたエンゲージメントモデルに基づいて価値を向上させるために積極的に取り組む

これらのアプローチは通常の組織内の階層によるガバナンス的な考え方とは異なるため、参加者はこの理念や違い、基本的なアプローチを予め理解しておく必要があります。原文では、ステークホルダードリブン、オープンで革新的なオーナーシップ、賛同されたエンゲージメントモデルなどの用語を使って解説しています。


コミュニティとしてのアプローチの勘所

次に、BTABoKが提案するコミュニティの具体的なアプローチを見てみましょう。


「実践的コミュニティ」と「センターオブエクセレンス」

BTABoKでは、「コミュニティ」という用語は、医師や建築家などの専門職が使用する際の実践モデルを指しており、実践的コミュニティ、または、センターオブエクセレンスとして捉えるのが適切、と述べています。更に、コミュニケーションや知識の共有が格段に向上し、チーム全体の責任感や目標の共有につながるメリットがあるため、コミュニティの捉え方を進化させることが重要、と述べています。


成果を上げるコミュニティの構造化について

ITアーキテクトのコミュニティを効果的に構築する際に考慮すべき要素として、リーダーシップ、メンタリング、経験値などのソフトスキルに焦点を当て、以下の4つを紹介しています。

  • コミュニティの構築には、組織の報告ラインと役割と実践のリーダーシップの2つの側面があり、アーキテクトの成熟度が不十分な場合は、十分なサポートが必要

  • BTABoKの定義に沿った役割、メンタリング、エンゲージメントに基づく成果に焦点を当てたリーダーシップの実践では、状況に応じて柔軟に適用が可能

  • シニアとジュニアのアーキテクトを選別する際は、経験年数よりも能力と成果が重要であり、コンピテンシーに基づいて行う必要がある。メンタリングや役割上の指針にもなるCITA-P/D認定試験を通じての認定試験実務経験レベルを問うことで、適切な判断を下すことが可能

アーキテクチャ実践を目指すコミュニティの実際の運営では、アーキテクトの成熟度に応じて適時必要なサポートやメンタリングが必要になる事もあるため、メンバーの積極的な働きかけが重要です。


専門分野とコミュニティの対立

BTABoKでは、コミュニティ内の運営時の際に異なる専門家同士の間で対立が生じるケースも想定され、その対処法について述べています。BTABoKには、こういった人や役割に絡む人同士の摩擦や対立に関する解説も含まれており、これはBTABoKが持つピープルモデルの特徴の一つになっています。


対立については、次の様に述べています。専門性の高い活動や役割については、エンゲージメントモデルの初期段階で専門家の対立に対処する必要があります。


医学の領域で見られる専門医同士の立場の違いや区別の例は、ビジネス・アーキテクト、ソリューション・アーキテクトやソフトウェア・アーキテクトらが効果的に協働できるようなアーキテクチャの実務設計に役立ちます。


この実務設計の段階で、予めアーキテクトや専門家の役割や成果物の範囲等を明確にしておき、課題や命題の判断基準や解決のプロセス等も取り決めておく事も有用と思われます。


続いての解説で、2つの質問に答えています。

質問1:アーキテクチャの実践には専門家は必要か?

必要となる専門家の数を特定する際の判断や方法をいくつか述べています。

  • 大規模なチームや非常に複雑なドメイン:複数のビジネス、情報、インフラ、ソフトウェア、ソリューション・アーキテクチャの専門家が参加し、その数も多くなる可能性がある

  • ビジネスモデル、製品の種類、その業界へのデジタル浸透度:専門家が必要かどうかの判断材料となり得る

  • アーキテクチャチーム・キャンバス:適切な数のスペシャリストとジェネラリストを特定する際に利用して、採用、トレーニング、指導を行う

質問2:各専門家はどのように配置すべきか?

専門家の配置のために詳細なガイダンスとツールが提供されており、配置の際にはいくつかの特別な注意が必要である、と述べています。

  • ソリューション・アーキテクト:他の専門家やアーキテクトと連携してバリューストリームを確実にする役割を担う

  • 大規模で複雑なプログラム:上級スペシャリストがリードを務める

  • アーキテクチャ活動のリーダー:知識や経験が必ずしも豊富でないアーキテクト以外のメンバーがアサインされる場合には留意が必要。(コンピテンシーの5つの柱を参照する)

拡張されたチーム:メンタリングとリーダーシップ

続いて、コミュニティや組織でのメンタリングとリーダーシップのソフトスキルについて、以下の3点を述べています。

  • サーバントリーダーシップ:コミュニティの活動は全体的にこの能力に応じて決まる傾向があり、最も習得が困難なソフトスキルである

  • メンタリングとリーダーシップのスキル:アーキテクトのキャリアの初期に学ぶべき、反復が必要な実践的なスキルである

  • リーダーシップとメンタリングのプログラム開発と維持:継続的な活動として拡張チームや参加メンバーの理解が必要である

ここでも、「人」にフォーカスしたソフトスキルと継続的なコミュニティとしてのサポートの必要性に触れています。アーキテクチャ実践のコミュニティの活動レベルの維持と底上げに重要な役割を持つスキルである事が示唆されています。


人事・キャリアへの示唆

BTABoKは、アーキテクトのキャリアと成長にも言及しており、その活用方法が述べられています。

  • アーキテクトのキャリアアップには、コンピテンシーと経験が重要。BTABoKは汎用的なコンピテンシーモデルであり、多様なテクノロジー環境への適応が可能

  • 専門家の経験値の指標としては、関連する専門家協会の認定が重要。組織やコミュニティ内で認定資格の整合性を図ることが推奨される

また、大規模チームのエンゲージメントモデルを維持するには、横断的なステアリングコミッティの運営が必要、と述べています。このコミッティはチームの方向付けや活動の調整、コミュニティの成長を推進します。興味ある方は是非原文もご覧下さい。


終わりに:

今回は、BTABoKのピープルモデル内のコミュニティを取り上げてみました。組織の内外のアーキテクトや専門家から構成されるコミュニティの運営の際の具体的なヒントを紹介しました。ご一読頂き、有難うございました。読者の皆さんに何かしら今後の活動に参考になれば幸いです。今回のコミュニティについてご意見、コメントがありましたら、お聞かせください。

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