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執筆者の写真塩田 宏治

コラム BTABoK EngagementModel(2)~オペレーティングモデルの概要~

Iasa 日本支部 理事 塩田 宏治

CITA-A, TOGAF®, DASSM®, SAFe®5 SPC, CBAP®, PgMP®


 前回のコラムでは、エンゲージメントモデルの中からアウトカムモデルの紹介がありました。今回は、それに続いてオペレーティングモデルの紹介を行いたいと思います。

 オペレーティングモデルは、アーキテクトがアウトカムで示されたような目的を達成するために、実際に実践として取り組む内容になります。図1は、オペレーティングモデルの全体像を示しています。中央の十字になっている領域で4つのアーキテクチャのベースのもとでPlan/Build/Run/Manage Valueのサイクルを回して、ソリューションアーキテクチャを通して価値を実現する構造が記述されています。その周りに、アーキテクトが実行するために必要なオペレーティングモデルの要素が、プロセス、アーティファクト、マネジメント、ピープルの4つの分野に分けながら記述されています。



図1 オペレーティングモデル全体像


 現時点でのパブリックレビューとして公開されているオペレーティングモデル要素の目次は、図1の要素名と若干の差異がありますが、以下のような構成となっており、数多くの項目について記述されています。

Product & Project

Roadmap

Assignment

Design

Requirements

Decisions

Deliverables

Architecture Description

Views and Viewpoints

Methodology

Innovation

Enterprise Engagement Model Annual Activities

Architecture Tools

Repository


 従来のITABoKで示されていたアーキテクトの共通コンピテンシーの5つの柱の中で示されていた要素も多く含まれます。本コラムでは、上記要素の中で、ITABoKの5つの柱の中の要素としては明示的に示されていなかった要素について、簡単に見ていきたいと思います。


Product & Project

 従来私たちはプロジェクトを通してプロダクトを作成してきました。その時のフォーカスは、有期のプロジェクトをどのようにマネジメントし、プロダクトをQCDを担保していかに提供していくかでした。しかし近年の不確実性や不透明なビジネス環境では要求を全て最初に定義し一度に全てをリリースする方式ではリスクが大きすぎるようになってきました。継続的にプロダクトを部分的にリリースしてビジネス価値の実現にフォーカスしていくアプローチが増えてきており、こうしたプロダクトマネジメントのオペレーションが有効になってきています。

 もう一点重要なことは、ビジネスケイパビリティとの関連です。プロダクトとは、1つまたは複数のビジネスケイパビリティを、顧客に対してどのように提供するかということを示しています。つまりアーキテクチャ観点からすると、プロダクトはHowを意味しているということになります。


Roadmap

 ロードマップのテクニックは多くの組織で使われています、中期戦略のロードマップやプロダクトのロードマップなど、その計画のホライズンの違いにより、異なるレベルのロードマップが作成されます。典型的に行われているのは、中期計画や年次予算計画の中で、中期以上の時間軸で重要な各イニシアチブがどのようなタイミングで実施されるかを、ガントチャートのようなイメージで示すものです。そして、そこで示されたプログラム/プロジェクトやプロダクトに対して、その単位でのロードマップが作成されます。

 注意してほしいのは、ロードマップは具体的な計画ではないということです。Howではなく、何をしたいかというWhatが示されています。またその時間軸は、通常は1年よりも長い中期スパンになります。


Assignment

 アーキテクチャ・アサインメントとは、アーキテクトチームが顧客や組織とどのように協業して役割を果たしていくかについてのプロセス、手法、ゴールのことをさします。例えば、以下のような観点が含まれます。

 アーキテクトがポートフォリオ内のどのイニシアチブに関わっていくか

 経験を通して成長し、メンタリングし、成功を確実にするためにどのように協業するか

 顧客、PMO、アジャイルチームなどと協業しながら、どのように優先順位付けをするか

 どのようにロードマップを実現していくか


Innovation

 イノベーションは新しいプロダクトやサービスをイメージするかもしれませんが、それだけではなく、新しい顧客経験、新しいビジネスモデル、新しいオペレーションモデルなど様々な種類が存在します。

 アーキテクチャの実践は、組織がとりうるリスクレベル等の範囲の中で、企業のデジタルアドバンテージを活用したイノベーションにおいて、中心的な役割を果たします。


Enterprise Engagement Model Annual Activities

 この要素では、ビジネス、情報、アプリケーション、インフラストラクチャー、ソリューションの各アーキテクトが年ごとに行う活動の概略が示されています。(本コラム執筆時点では、まだ作成途上のステータス)

 例えばビジネスアーキテクトのケースでは、大きく2つのプロセスに分けられています。

  年間のビジネスアーキテクチャ・プロセス

   スコープ特定、ロードマップ修正、ビジネス整合、見積り、優先順位付け、サインオフ

  プロジェクトの選定と立ち上げプロセス

   プロジェクトスコーピング、ビジネスケース実現、ビジネスアーキテクチャボード、

   ビジネスアーキテクチャからソリューションアーキテクチャへのハンドオフ


その他、従来のITABoKの5つの柱の中でも触れられていた以下の内容が含まれています。

Design

Requirements

Decisions

Deliverables

Architecture Description

Views and Viewpoints

Methodology

Architecture Tools

Repository


 オペレーティングモデルは、アーキテクトが実際に実践する時の内容を扱っていますので、BTABoK3.0のサイトから詳細を学習してみることによって、是非理解を深めてください。


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