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BTABoK Value Streams ~ ビジネス目標を達成するための価値の流れ~

執筆者の写真: 川森 脩平川森 脩平

はじめに

今回のコラムでは、BTABoKにおけるバリューモデルの一つである "Value Streams" について取り上げます。Value Streamsは、組織が提供する価値の流れを明確にする概念です。本コラムでは、Value Streamsの基本概念から、ITアーキテクトがどのようにValue Streamsを活用すべきか解説します。

 

Value Streamsとは

BTABoKにおけるValue Streamsとは「組織がビジネス能力をどのように構成して、内部又は外部の利害関係者(通常は顧客)に価値を提供するかを示すもの」を意味します。

ITアーキテクトの役割は、単なる技術の実装にとどまらず、ビジネス目標を達成するための戦略的な意思決定を支援することにあります。そのため、ITアーキテクトは、データやシステム、インフラの構造を設計するだけでなく、価値の流れを最適化して組織全体のパフォーマンス向上に貢献する必要があります。ここで重要になるのが「Value Streams」の概念です。

Value Streamsは、組織のビジネス能力を通じて、どのように価値を創出し、その価値を提供するためにどのようなサービスが関わっているのかを明確にする手法です。ビジネス戦略と技術戦略を統合し、最適な価値の流れと価値の構成を理解するために、ITアーキテクトはValue Streamsを活用することが求められます。


Value Streamsがもたらす効果

組織が市場で競争力を維持し、持続的な成長を実現するためには、価値の流れを適切に理解し、最適化することが不可欠です。新しい製品やサービスの市場投入、合併・買収、調達先の変更、デジタル化、新規市場への参入、業務の最適化など、ビジネス環境の変化に適応するには、価値がどのように顧客・その他のステークホルダーへ流れているのかを把握する必要があります。

Value Streamsは、価値の流れを明確にし、最適化するための手法であるため、組織はビジネスの変化に迅速に対応し、構造的な無駄や非効率を削減しながら、新たな市場機会を創出できます。

より具体的に述べると、Value Streamsを活用することで以下の効果があります。

  • 顧客セグメントの差別化

  • 能力の依存性と関連性の理解

  • 規制や法改正の影響の理解

  • 構造的無駄と非効率の特定

  • 製品・サービスの国際化とカスタマイズ

  • 既存の能力を活用した新しい価値の流れの創造

  • サービス指向と疎結合システムの設計


Value Streamsを活用するステップ

Value Streamsを活用するためには、以下のステップを踏むことが重要です。

  1. 価値の流れの特定

    まずは、価値の流れを特定する必要があります。

    価値の流れを特定するための起点としては、顧客視点以外にも、お金の流れ、業務の流れ、ルールやポリシーの影響といったステークホルダー視点を起点とする方法があります。

    【顧客視点】

    • 製品・サービス(Products/Services)

      ⇒最も直接的な方法。顧客が認識する具体的な価値(=製品やサービス)を起点に、価値がどのように流れるかを特定

    • ビジネスモデル(Business Model)

      ⇒製品・サービス単体ではなく、企業全体の価値提案を整理し、価値の流れを特定

    • 付帯サービス(Ancillary Business Services)

      ⇒製品やサービスそのものではなく、関連する前後の活動(返品、故障対応、苦情、請求、情報提供など)を起点として価値の流れを特定

    【ステークホルダー視点】

    • 財務(Financial)

      ⇒売上、コスト、投資、利益などの財務データを基にバリューストリームを特定

    • 運用(Operational)

      ⇒組織の活動(業務の流れ)の中でどのプロセスが価値を生み出しているのかを特定

    • ガバナンス(Governance)

      ⇒法規制、社内ルール、経営方針などがどのように価値提供に影響を与えるのかを特定

  2. ビジネス能力のマッピング

    価値の流れに沿って必要なビジネス能力をマッピングします。

    • 価値の流れの視覚的マッピング

    • 各ビジネス能力の接続関係の明示

    • サービスの相互作用の特定

  3. 価値の流れのパフォーマンス分析

    価値の流れの効果を評価し、課題を特定します。

    • 各能力のパフォーマンス評価(効率・有効性)

    • 主要なペインポイントの特定

    • 情報ギャップの特定と解消

  4. 価値の流れの貢献度分析

    価値の流れが戦略や財務に与える影響を評価します。

    • 戦略的影響と財務的影響の評価

    • 価値提案のインパクトの分類(アドバンテージ、戦略的サポート、ビジネス上の必要性)

  5. 価値の流れの最適化

    価値の流れを改善し、より高い価値を生み出すための調整を行います。

    • サービスの境界の明確化と最適な配置の検討

    • 財務的影響の評価とコスト削減・収益最大化の施策検討

    • 規制の影響分析とリスク対応策の策定


 

Value Streamsは、ITアーキテクトがビジネス目標を達成するために不可欠な概念です。Value Streamsを活用することで、価値の流れを最適化し、ビジネス戦略と技術戦略の整合性を確保することが可能となります。組織の競争力を高めるために、ITアーキテクトは価値の流れを理解し、価値の流れを最適化することが求められています。


ご一読いただきありがとうございました。

Iasa日本支部では情報交換や勉強会の場を設けており、システムの視覚化についても研鑽を深めていますので、今後のIasa日本支部の活動へのご参加、ご協力をよろしくお願いいたします。

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