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執筆者の写真中山 嘉之

アニュアルカンファレンス2023レポート

飯島先生 「エンタープライズオントロジーの勧め」

<講演概要>

・狭義のデジタルトランスフォーメーション(DT)はデザインの変革を言う

・DTには企業活動の本質を捉えるエンタープライズオントロジー(EO)が有効

・EOの代表的理論(PSI理論、OMEGA理論、ALHA理論)の紹介

・EOの実務的有効性についてモデリング方法論DEMOを用いた事例の説明

<感想>

・細部のITではなくビジネスシステムに向き合った芯を捉えた内容であった

・かねてからビジネスモデルの俯瞰図を模索してきたが間違いではなかった

・EOのモデル表記について2006年頃から世の中にあった事が興味深い

・“X線写真で皮膚を透過して骨格が見えるが如く”の比喩がたいへん絶妙

・反面、抽象化度合いの高さに日本の企業人が追い付いていけるかが課題か


濱田さん 「システムアーキテクトの重要性とその育成について」

<講演概要>

・システムアーキテクト(SA)とは、経営、事業、技術の八咫烏的スーパーマン(IPA)

・SAに求められるスキルは、洞察力、コンセプチュアル、ヒューマンスキルが重要

・SAに求められる考え方は、仮説推論、抽象化思考、アナロジーがポイントとなる

・SAが果たす役割は、業務要求からシステム要件に転換しビジネスアジリティに応える

・システムアーキテクトを育成する為には、コーチングとJOBローテーションが必要

<感想>

・社内のアーキテクト養成講座を担当されており、実践的な現場感が満載

・一貫して「自分の頭で考える習慣をつけること」の重要性を訴えた点が印象深い

・現場30年の経験により培われたアーキテクト論は地に足のついたものであった

・所々に盛り込まれた隠し味的フレーズ「分業が分断を生む」がとても頭に残った


松井さん 「新時代のアーキテクトが拓くデジタルアドバンテージへの道」

<講演概要>

・アーキテクトの役割は曖昧さへの対処、創造性の発揮、複雑性のコントロールにあり

・近年、新たなアーキテクトの価値としてビジネス貢献、DXへの貢献が叫ばれる

・BTABOKのエンゲージメントモデル(個ではなく組織の力)の説明

・BTABOKデジタルアドバンテージへの道(個からエコシステム)の説明

<感想>

・BTABOKがコンピテンシーからエンゲージネントへとスコープが拡大された点は納得

・BTABOKの3層エンゲージメント「アーキチーム⇔組織⇔顧客」は分かり易かった

・アーキテクチャコンピテンシーを発揮する“チーム構成”に言及するに至った点を評価

・アーキテクチャのビジネス効果測定の為の各種バリューモデルが興味深い

・顧客への価値提供などBTABOKモデル抽象度がかなり高いので今後具体例が望まれる


パネルディスカッション 「デジタル変革の真実 ~ アーキテクトが果たす役割とは?」

<モデレータ>小北 洋史 Iasa日本支部 理事 <パネリスト>飯島 淳一 氏、濱田 潔 氏、中山 嘉之 Iasa日本支部 理事、末永 貴一、Iasa日本支部 理事

■デジタル変革が企業にどう影響しているか、その真実

 ・デジタイゼーション、デジタライゼーションはコロナ禍でAR、VRを用いて進んだ

・狭義のDXは、一部の企業では進んだ企業もあるが、進んでいかない企業も多い

 ・大企業は既得権益者が足かせになって進んでいないという面がある

■アーキテクトが果たすべき役割と、求められるスキルセット

・ビジネスドメイン知識とIT知識の両方を知ってソリューションを導くことが役割

・日本の大学教育では情報系と業務系の分断が欧米より大きいという感じがする

■成功するために必要な人材の育成及び獲得方法

 ・ITと業務がお互い分からないことは構わないが、知ろうとする意欲が必要

 ・抽象化スキルをもってすれば知らない業務をモデル化することで知る事ができる

 ・スタートアップ企業の末永さんはデジタルが当たり前なのであえてDXと言わない

 質問)CEOがビジネスアーキテクトであることが、日本と欧米との大きな違い?

  ⇒建築系のCEOの場合は構造的に物事を捉えるのでDXが上手くいく事がある

 質問)アーキテクト育成し継続する為には?ベンダーとユーザの関係はいかに?

  ⇒アーキテクトを育成する人事制度、ベンダー⇔ユーザ企業が混じる流動化が必要


総合的な感想 

・それぞれ立場が異なる発表者からの講演は、どれもが今回のテーマ「Beyond Digital Transformation」に相応しい、視聴者にとって有意義な興味深いものであった。

・2023年現在、DX推進が進んでいる企業とそうでない企業が二極化してきた感はあるも

のの、一方でユーザ企業の人材流動化の兆候も出始めており、企業システムにおけるアー

キテクチャの重要性、有能なアーキテクトの必要性についての認知度が高まる気配も感じられる。今後の産学でのアーキテクチャの取り組みに期待したい。

・IASA-JAPANは引き続き日本企業のアーキテクチャ活動を支援していきたい。


                                 以上。

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